旅で語る自分。

親愛なるあなたへ

初めて方位をとった11年前。

南紀和歌山、世界遺産にも登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」。

その中継地であり、目的地でもある新宮(しんぐう)へと向かいます。

特急くろしおに乗って丸4時間。

紀伊半島を裾野に沿って進み、熊野灘を臨む。

新宮はまことに遠い。

果無(はてなし)山脈や熊野三千六百峰の峰々が広大無辺に連なる山塊の向こうに、その街はある。

新幹線で大阪から東京へ出るほうがよっぽど「近い」かもしれません。

でも、その時間にさまざまなことを語る。

自らと語る。

「次は終点、新宮です」というアナウンスとともに不思議な思いが込み上げてきます。

懐かしい、もちろんお世話になる土地感もあるけれども、それと同時に何か自分の分身的なものと会話するような。

旅の終着点。

それは当時を語られた自分との再会を機に始まる新たな出発点でもあります。

by You