千里眼を求める。

親愛なるあなたへ

熊野三山

「熊野速玉大社」「熊野那智大社那智山青岸渡寺」「熊野本宮大社」を含む三社一寺の総称であります。

もともと三つは、速玉は神倉山のゴトビキ岩を、那智那智大滝を、本宮は熊野川をとそれぞれに崇拝対象がある独立した自然信仰でありましたが、そこに神仏習合の流れ、そして祖先神信仰の流入により一つにまとまっていきました。

そのまとまりにより、古より多くの人々が身分の貴賤や職業などの区分なく受け入れた熊野の地を目指します。

厳しい道中、想像を絶する難路の先に浄土がある。

お釈迦様の言う「末法の世」の入り口にあたる時代から世間の腐敗や動乱との重なりに、人々は魂の安寧を求め「蟻の熊野詣」と呼ばれるまでの足跡が古い石畳を踏みしめました。

そこには我々が知りたいと思う「千里眼」なるものを求めたのかもしれません。

この世では見通せない遥か過去と未来を感じる千里眼を。

速玉が前世の罪を浄め、那智が現世の縁を結び、本宮が来世を救済すると言われ、そこに私たちが本当に求める見通す「何か」があったに違いありません。

そして、その「何か」は今も俗界と隔てた古代の気が漂う鬱蒼とした森に隠され、守られています。

by You