神の道を行く。

親愛なるあなたへ

熊野三山へ向かう道を「熊野古道」と言います。

いくつもの経路がありはるか遠くは三重県伊勢から、そして大阪から・・。

和歌山北部の高野山奈良県の吉野などから1000m級の山をいくつも越え本宮大社へ至るという究極の難路もあります。

それら熊野古道の中に、那智大社へ入る直前に敷かれた「大門坂」と呼ばれる場所があります。

地元の観光案内の方によりますと「大門坂は完全に観光地化している」そうですが、しかしそこにでさえも体に染み渡るようなご神気が。

国道がすぐそばを通っているのですが、その俗世界を隔絶するような、一本に伸びた道の石畳からは古の人々の息遣いが聞こえるよう。

熊野の地は土地自体のパワースポットもあるのですが、もう一つ「霊的なもの」が鎮まる場所だと感じます。

一つの説に「熊」とは「隈(クマ)」であり、すみ・陰・暗がり、それらが転じて「籠る(こもる)」という意味になったという。

神が隠れた場所。

伊弉冉尊(いざなみのみこと)が火の神、軻遇突智尊(かぐつちのみこと)を生む際に亡くなってしまいますが、その伊弉冉尊が埋葬された地がここ熊野であると言います。

熊野市に花窟神社(はなのいわやじんじゃ)というのがあり、ここのご神体が背後の巨岩なのだそうですが、その麓に埋葬されたと言い伝えられています。

直線距離では大阪からそう離れていない熊野の地も、大雲・小雲取り巻く果てない峰々がその地を外界から阻んでいる。

新宮はまことに遠いという表現はそうした伝説とも矛盾しないのかもしれません。

生と死と再生と、それらが一体となった神の道を行く。

世界遺産に登録されるという本質はそういったところにも表れているのだと思います。

by You