爆発する聖(ひじり)。
親愛なるあなたへ
広大な自然をまとう生田緑地内の一角にたたずんでいます。
巨匠・岡本太郎氏の歴史、そして数々の作品を拝覧する。
天才が生んだ天才。
父・岡本一平、母・かの子の自由と個人の人格を尊ぶ、究極の家族像。
親交が深かったという小説家・川端康成氏曰く、
ー 岡本一平、かの子、太郎の一家は、私になつかしい家族であるが、また日本では全くたぐい稀な家族であった。私は三人をひとりひとりとして尊敬した以上に、三人を一つの家族として尊敬した。この家族のありように私はしばしば感動し、時には讃仰した。一平氏はかの子氏を聖観音とも見たが、そうするとこの一家は聖家族でもあろうか。あるいはそうであろうと私は思っている。家族というもの、夫婦親子という結びつきの生きようについて考える時、私はいつも必ず岡本一家を一つの手本として、一方に置く。この三人は日本人の家族としてはまことに珍しく、お互を高く生かし合いながら、お互が高く生きた。深く豊かに愛し敬い合って、三人がそれぞれ成長した。 ー
その自由闊達に見開いた目で物事の本質を捉え、何にも囚われない破天荒なまでのむき出しになった精神を開放し、究極の自由人による波瀾万丈と苦悩の地から挑戦し創造された傑作の数々。
私はパブロ・ピカソに代表される抽象芸術に全く知見を持ち合わせていない、いや芸術そのものに全くの無知であるのですが、何故か岡本太郎氏の作品「樹人」の前で足を止める。
それから小一時間、自分でもビックリする間の時間、そこに釘付けになる。
その場から「離れられない」のです。
何度人が入れ替わったでしょう。
いつぞや、キトラ古墳の四神の館で同じような体験をしたのですぐに「作品に陶酔した」というのは感じたのですが、全くの「興味がないものに」吸い寄せられる経験に驚きを隠せません。
樹をモチーフにした人形にように、あらゆる曲線と膨らみ、そして鋭さを持った突起が四方八方に伸びる。
言ってしまえばそれだけになってしまうのかもしれませんが、その不思議な曲線とふくらみ、相対する先端の鋭さ、八方へ広がる何とも表現し難い一体感が、まるで宇宙と自由、岡本太郎氏の世間への挑戦と反発、その他あらゆるものが詰まって一気に「爆発した」、そんな激しい衝動を感じました。
「芸術は爆発だ!」
岡本太郎氏と言えば、大阪万博のメインモニュメントとして建設された「太陽の塔」が有名ですが、全ての作品に、その岡本イズムなるものが流れているのかもしれません。
聖人ではないのかもしれないけれども、それでも間違いなく人間として何か一つ究極に達せられた、聖を秘められた方でいらっしゃると思うのです。
その哲学。
画家・芸術家としてだけでなく、執筆、タレント、その他あらゆることにも顔を出し、ピアノがかなりの腕前など趣味も多く、凝縮された自らの生を日本を超え世界で爆発させた大偉人。
日本人が大切にする「人の目」などといったものとは無縁、自らの魂をさらけ出し、世間を挑発し続けた人生。
その声と息吹と精神は間違いなく近代日本の宝。
私達はもっと爆発させなければ本当の進歩と調和はないのかもしれません。
岡本太郎氏ご本人も「真の調和とはぶつかり合いの中にある」。
我々が忘れている物事の根源の何かがきっとここにある。
そう思います。
是非。
by You