親愛なるあなたへ
コピー取り、電話番、お茶汲み。
雑用と言われている仕事からは、誰もが早く解放されたいと思っています。
でも、雑用から解放されたいと思っている人は雑用の真髄を知りません。
雑用と呼ばれているだけで、他の仕事同様、無限に奥が深いのです。
僕の仕事場は飲食店ですから、雑用と呼ばれるのは「洗い場」です。
新人にまずはじめに与えられる仕事です。
調理で失敗すると「洗い物でもしてろ!」と怒鳴られます。
でも、洗い場は本当はものすごく難しくて、奥が深いのです。
「洗い物でもしてろ!」と怒鳴っている先輩も、実はそれを良く知っているのです。
食器や調理器具が山のようにあるので、常にあがってくる洗い物に優先順位をつけながら洗浄機をまわさなければなりません。
偏った種類をため込んではいけないのです。
ほとんどが割れ物なので、僕の職場のようにムチャクチャ忙しい店でも、スピーディーに洗いながらも丁寧に扱う技術が求められます。
僕の調理の技術がまだまだなのと、メンバー構成上の関係で、忙しいときは洗い場をすることが多かった。
でもあるとき、洗い場に芸術を見出した。
どうしたらもっと美しく洗い場をまわせるか、と考えたのです。
もともと片付けというのは僕の得意分野でした。
その熱が、後輩アルバイトに伝わって、洗い物を積極的にするようになりました。
高校生というのは、本当に純粋です。
社会的な偏見がありませんから、「カッコイイ」と思ったものは、そのままマネをするのです。
前の会社では、「あの人、コピーを舞うようにとるんだよね」と言われている大先輩がいらっしゃいました。
コピー取りに「舞う」という表現を使うのです。
もはや、演劇・ミュージカルの世界です。
全ての雑用は、芸術ですね。
by You