親愛なるあなたへ
「季節の遺伝子」というのが一人一人あるように思います。
人間には好きな季節があらかじめインプットされている。
この度は久々の雪にテンションが上がりその美貌をペンを持って心置きなく。
個人的に「気学による星が一白水星だから」ということもあるのか、雪や冬という季節に美を感じます。
初めて心の底から風景に美しさを感じたのが思えばこの季節。
先日ご紹介しました川端康成「雪国」の有名な書き出しから、ですね。
あれをまさにモデルの地で体験した当時。
高校生のとき受験生として金沢を訪れた道中。
上越新幹線に乗り込み、全長10キロに及ぶ舞台の清水トンネルを抜ける。
暗闇から這い出た眼前に広がる一面の白銀の世界。
越後湯沢駅で降りる。
今はなき特急はくたかのプラットホームへ。
豪雪の山合いに囲まれた静寂のホームに一人、旅行バックを片手にたたずんでいると盲導鈴が「ピーンポーン」と単調に繰り返し鳴り響き、晴れた空からどこからともなく粉雪が静かに降りてくる。
「旅人」という代名詞がぴったりのその情景に胸を深く打たれたのを今でも鮮明に覚えています。
静かだけれども何かに包まれている。
そんな絶景が現在の旅好き、一人好き、物事を深く考えること、そして冬を愛するという天から送り給うたアイデンティティーに無意識に触れた瞬間であると、今振り返ってみて思います。
自分の好きな季節でわたしの中の美学が花開く。
それはきっと日常生活の中でも役立つこと、豊かになることのヒントに違いありません。
是非季節の遺伝子をたぐってみてはいかがでしょう。
by You