親愛なるあなたへ
社会人になって独り立ちをすると、親孝行を考えるようになります。
社会の風に当たると、自分が親にいかにお世話になっていたのかに気づくことができるからです。
自分を立派に育て上げてくれた親に、感謝の気持ちを送りたいと考えます。
初給料で何かプレゼントしたり、美味しいものをお腹いっぱいご馳走してあげたいと考えます。
僕も、前の会社で初ボーナスが出たとき、日頃の感謝の気持ちを込めて、両親に食事をご馳走させていただきました。
「物」や「サービス」という形で感謝を表すことは、とても素晴らしいことです。
でも、もっと素晴らしいのは、親が成長するための刺激をプレゼントしてあげることです。
親は、子供の成長を生きがいとします。
僕は親になったことがないので「親心」を理解することはできませんが、息子の立場から、両親が、僕の成長を心から生きがいとしていることを肌で感じることができます。
親は、子供の成長に神経を集中するため、自分の成長をほったらかしにしてしまいがちです。
それは、親が怠けているのではなく、生きるための全エネルギーを、子育てに費やすからです。
独り立ちしたら、親に成長する時間を分けてあげる気遣いを持つことです。
「僕はもう十分育ててもらったから、これからは自分のことをもっと大事にしてね」という優しさを持つということです。
老後の両親のお世話をするという人がいます。
それが、今まで育ててくれたことに対する優しさだと思っているのです。
人間の体には、「廃用性萎縮」というシステムがあります。
使わなければ、その器官は急激に衰えていくという性質です。
お世話をすることは、手足、内臓、脳を全て壊す方向へ向かわせているのです。
本当の優しさとは、両親が何歳になっても一人で生活できるようなアドバイスをしてあげることです。
死ぬ直前まで、精神が成長し続ける刺激を与えてあげる、ということです。
「年を経ると赤ちゃん返りする」というのは、人間本来の性質ではなく、環境が作り出した幻なのです。
脳科学の第一人者である茂木健一郎先生は、「人間の脳は死ぬまで成長を続ける。成長段階で人間が先に死んでしまう」とおっしゃっています。
人間の究極の欲求である「進化」を、両親にも最後まで体験させてあげることです。
本当の親孝行とは、物質ではなく、魂のレベルの話なのです。
by You