同じことを同じように。

親愛なるあなたへ

世界で一番過酷な修行があります。

千日回峰行」といいますが、簡単に言うと約10年間の毎年決まった期間、通算1000日、雨が降ろうが槍が降ろうが、とにかく山の中を一日30〜40km歩くというもの。

その山も「獣道」やら「断崖絶壁」やら。

これだけでもめまいがしますが、極めつけは食べるのはほぼご飯とお水だけ。

睡眠時間は数時間。

確実に栄養失調と睡眠不足で、普通の生活でも体は危険な状態にさらされ続けます。

これを何があっても一年の決まった時期、3〜4ヶ月、それを10年続けます。

途中病気もあります、怪我もあります。

野生の熊も出ます。

藪をかきわけていくのでマムシにかまれるかもしれない。

手当ても医者にかかることもできない。

台風の暴風雨の中、がけ崩れなどあらゆる災害に巻き込まれる可能性もあります。

でもやめてはいけない。

どんなに悶絶しようが激痛が走ろうがやめてはいけない。

夏場は気温が30度をはるかに超える山の中。

水分もほとんどとれず、普通に歩いていても必ず血尿が出ると言います。

1日だけであれば、体力があって睡眠も十分にとれているなら「やってもいいかな」、翌日、筋肉痛でも「苦しいけど根性だ」などという世界ではありません。

何があってもどんなことがあっても一日も欠かしてはいけない。

常にコンスタントなスピードで歩かないと、次の日までの睡眠時間を確保できません。

もし何らかの理由で帰りが遅れ、睡眠時間が2時間程度でも、あるいはまったく寝てなくても、また数十kmの山の中を歩く。

誰も助けてくれませんし、周りの僧侶仲間も助けてはいけない。

現場では、必ず三度は死と向かい合うことがあるのだそうです。

どうしても達成できないときがあるかもしれません。

これ以上歩けないという状況があるかもしれません。

そのときは常に持ち歩く短刀で腹を切るか、死出紐という縄で首をくくるか。

死を持って行を終える。

壮絶を究める世界です。

でも、やっていることはただ「歩く」だけ。

それが究極の悟りを開く方法であるという。

なぜこんなに辛いことを行者は好き好んでやるのか。

それは、お釈迦様が「情熱を持って同じことを同じように続けていると悟る可能性がある」と言ったからだそうなのです。

ただし、情熱を持っていないと可能性はゼロ。

同じことをただ同じように続ける。

情熱を持って。

どんなに小さいことでも、情熱を持って同じことを同じようにただ繰り返すだけで、人間はすごいところに到達できる。

この修行に比べれば俗世界で強欲を満たしながら大満足している私の苦しみなんて。

一つ頑張ってみようかと、改めてそう思った一日でした。

p.s.

千日回峰行は「堂入り」と呼ばれ、9日間、飲まず・食わず・眠らず・横にならない「四無行」という最大の試練があるのだそうです。

宗派により行の行程に違いがあるようですけれども、すごいというかなんというか、クレイジー

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