科学と哲学。

親愛なるあなたへ

科学と哲学というのは最終的に一緒のものであろう、と思います。

私が化学(ばけがく)を好きな理由がそこにあって、予備校で教えはじめてから改めてその理由に驚いてしまいました。

現代の化学は「量子力学」という考え方からなっています。

簡単に言うと「男であって女である」「プラスであってマイナスである」「明るくて暗い」というように、まったく相反する状態が同時に存在する、という理論です。

「理論とは全てが明瞭に理解できることだ」というニュートン以来の考え方を否定し、「分からない」という基礎を受け入れた学問です。

かのアインシュタインすらも「明瞭ではない」という理由で否定し続けた学問です。

この考え方は中国の易の考え方に非常によく似ています。

「太極図」をご存じでしょうか。

光と闇がお互いがお互いを生み、その永久の運動の中に世界が存在している、ということを表した図です。

この、いわば二進法のようなものがはじめと終わりのない「永久」という概念の中で動いている。

そういう概念が私の中にもっとも調和するように思います。

実は量子力学のはるか前にも、ニュートンの科学に疑問を持った人がいました。

それがゲーテです。

詩人、劇作家というイメージがあるかと思いますが、その他にも自然科学や哲学にも深い造詣を持っていました。

ゲーテ自身が最も重要と考えた作品は戯曲・ファウストではなく、「色彩論」であったと言われています。

白い紙に真っ黒な枠線を書くと、目で見たときには何ともありませんが、プリズムを通して見ると白と黒の境界線にのみ色が現れる、ということをゲーテは発見しました。

白でもなく黒でもない、その溶け合いの中に色という世界が現れる。

そういう自然科学であり、哲学。

はるか何千年も言い伝えられていることとと、近年数百年で考えられたこの調和に思わず感動するんです。

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