万世一系について考える。

親愛なるあなたへ

伊勢神宮に参詣したり元伊勢巡りをしたりすると「天皇制」について改めて考えるキッカケになります。

今上天皇でいらっしゃいます徳仁(なるひと)天皇陛下の御皇女、愛子様敬宮愛子内親王)の皇位継承に関し、女性天皇を認めるかどうか、という話について、実は非常に難しい問題なのだなと考えさせられました。

それまでは「女性」という「性別」を対象とした議論だと思っていたものですからとてもシンプルに考えておりました。

世論の「女性天皇でも認める」という流れに乗り、ジェンダーフリーが叫ばれ浸透している昨今、なに古臭いことを言ってやがるという自由人の立場の小生も(ここでは不適切な表現かもしれませんが・・)同様の意見であったのですが、おそらく世間の大多数の方同様、その問題の「核心」に迫って出した答えではなかった、ということに衝撃を受けたのです。

「女性の天皇」が問題なのではない、と。

明治22年に制定された皇室典範以降(昭和22年に改正)「男系の男子」が天皇になるよう定められています。

そこには男子、の文字があるので男性でなければいけないのだな、と思いますが、注目すべきは実は「男系」ということ。

「男系」とは「お父さんが天皇の血筋」。

ここからは簡単な説明のため、敬語・敬称を略して書いていきます。

過去に女性で天皇になったのは8人で(有名な推古天皇もそうですね)、女性が天皇になることは史実ではそこまで問題になっていない。

しかし、これまで全ての女性天皇は実は「男系」なのです。

要は、その女性天皇の「お父さんは必ず天皇の家系(一般人ではない)」。

そしてずっとたどっていくと初代:神武天皇までつながる。

神代の頃の信憑性はここでは触れずにおいても、数千年の間「お父さんをたどっていくとずっと一つの家系だ」というのが守られているのですね。

これを万世一系(ばんせいいっけい)と言います。

もし女性が天皇になって彼女のお子さんが天皇になる場合、旦那さんが天皇の家系なら男系が守られるのですが、「一般人と結婚してしまう」と「男系が崩れて」しまうのです。

昔は、女性の皇族が結婚する場合は相手も皇族でないといけない、という決まりがあったそうなので男系が崩れる心配はなかったものですから「女性の天皇」ということに関してハードルがあまり問題にならなかったのでしょう。(もちろん深い部分では色々あったのだと思います)

さらに、昔は男性の天皇が奥さん以外に何人もの側室と子孫を残す風習があり(明治天皇にも公になっている5人の側室がいらっしゃったそうです)、男系が途絶える可能性は低かった。

しかし、今は一夫一婦制であること、かつ女性が天皇になった場合にその子孫の男系を保つためには皇室内で結婚しなければならないこと・・・などを考えると現代の法律や風潮、そして一個人としての尊厳などの複雑多様な要素があり、とても難しい問題になってしまうのですね。

今回から「お父さん・お母さんのどちらをたどってもいいように」ルールを変更すればいいじゃないか、そもそも「男系」という概念自体が「差別」そのものではないか、と言われてしまえばそこまでなのかもしれませんが、ここからは不勉強な私も預かり知らぬ世界で、数千年に及ぶ連綿と受け継がれてきた歴史にはやはり何かあると思うのです。

筆者の薄い知識の中ではありますけれどもあくまで「感覚的」に思う持論としては、我々の精神が正常に保たれているのは「なにがしかのルーツを無意識に感じている」ところがあると思うのです。

毎日何事もなく生活していられるのは「誰それの子」で「どこで生まれた」というのがハッキリしているからだ、という内容を書いたことがあります。

普段は全く意識しないですけれども。

「実の親に会いたい」「自分の生まれ故郷はどこなのか」というアイデンティティークライシスに直面する現実も世の中にはあり、頭のどこかにある無意識に書き込まれてきた「万世一系」というつながりが、個人のそして国家の安定性(経済や社会倫理にまで波及する)に実は寄与しているのではないか。

別に現実に作用を及ぼしていないのであれば、私個人としても「女系」が始まっても全然構わないと思うのです。

お父さんだけでなく、お母さんをたどってもよい、と。

「女系万世一系」であっても構わない、と。

それが特に現実として問題にならないのなら全く構わない。

自由人である以上、変なルールに縛られる必要はどこにもない。

でも、もしそれが何か現実に作用を及ぼしているとしたら・・。

一概に「今回からいいじゃない」「差別だから」という話だけでは片付けられないのではないかと思います。

今回の継承問題について私は結論を出せません。

しかし、我々がただ「頑固」「くだらない」と呼んでいる日々の風習やルールと違い、数千年もの間受け継がれてきたものが目に見えない世界に与えている影響、それが回りまわって現実世界に与える影響を、ちょっと考えてみる。

もちろんこの議論の陰で、愛子様が「女性天皇になられるか、それとも主婦になられるかという、極端に異なる2つの未来像に引き裂かれたまま過ごしてこられた」という20数年、さらに愛子様もお一人の人間でいらっしゃりその心をそっちのけで議論される国全体からのご負担・ご心労は想像に耐えません。

そうした複雑な、答えの出ない難解な世界でありますけれども、それでも最終的にどんな答えが将来出されるにせよ、一度少しでも関わりを持って考えてみることがいい方向に進むことになるのは間違いないと、そんな風に思いました。

by You