苦手分野に、実は自分にとっての最大の喜びと感謝が込められています。

親愛なるあなたへ

僕は、父親が苦手でした。

僕の父親は、最先端の量子物理学を研究している研究者です。

量子物理学とは、分子・原子の世界をずっとずっと深く掘り下げた、全ての物質の原点を探るのがテーマです。

最近、南部洋一郎先生・小林誠先生・益川敏英先生が「CP対称性の破れ」を理論的に証明した功績でノーベル物理学賞を受賞されました。

世の中は、「上と下」「プラスとマイナス」というように全てのものが対になって存在しています。

「CP対称性の破れ」とは、言うなれば、物質の対になる物質、「反物質」というものがなぜ存在しないのかを証明した画期的理論です。

理論自体は、先ほどの先生方によって30年以上も前に証明されていたのですが、実証されてはいませんでした。

「CP対称性の破れ」を実験によって確認し、この理論をノーベル賞へ導いたのが、僕の父親の研究チームです。

高校時代に物理、大学時代に物理化学を学んだ経験で分かるのですが、この世界の神髄を目指すためには、「全て理論で説明し切る」という強い意志がなければ務まるものではありません。

僕の父親は、その強い意志を持っていました。

しかし、幼い僕は自分の感情をないがしろにされている感じがしていたので、そんな父親が本当に苦手でした。

こんな大人には絶対にならないぞ、と思ったこともありました。

ところが、僕が社会へ出て経験を積み、スピリチュアルな世界へ興味を持ち始めてから変化が起こりました。

あるとき、物理学の世界について父親と対等に話ができるようになったのです。

「対等」というのは、知識面のことではありません。

自分が何を考えているのかということを、相手の主張を認めながらお互いに共有する、ということです。

スピリチュアルな世界と物理学の世界は、実は一対一の関係なのです。

苦手分野は、苦手を意識している時点ではその本当の価値には気づきません。

しかし、「苦手」と感じていることには必ずメッセージが込められているのです。

もし、その分野が自分の人生にとって不要なものであるならば、「苦手」と感じることすらありません。

僕の苦手分野は「父親」でした。

でも、その父親が今の僕の根源を作っています。

僕自身を作り、生きるための喜びを僕に与えてくださった父親に、感謝します。

そして、その父親にこれからたくさんの恩返しができることに、感謝します。

by You