親愛なるあなたへ
僕のマンションのそばでは、毎晩チャルメラの音が鳴り響いています。
屋台を引いて、ラーメンを売り歩いているのです。
チャルメラのおやじさんにお会いしたので、一杯いただきました。
「ずっとこのお仕事をされているのですか?」と尋ねると、「46年になるわい。この仕事一本、ずっとや」とおっしゃっていました。
46年。
僕には想像ができない数字です。
僕が社会人になったのが26歳ですから、定年の60歳まで一つの職場で働いたとしても34年です。
もはや、仙人の世界です。
冬なので、僕はコートにマフラー姿でしたが、おやじさんはかなりの薄着でした。
この日は、今年一番の冷え込みでした。
「この寒さはな、もう今日はオレに仕事すんなって言っとんのや」と言いながらも、熱い仕事ぶりで僕のラーメンを作ってくださいました。
「はよ体にガタがこんかな。なかなかこの仕事がオレを解放してくれへん」
「屋台ができなくなってしまったら、何をされたいですか」と尋ねると、「やっぱり、この仕事やな」とおっしゃったのが、深かった。
手相を見させていただくと、マスカケ線と太い運命線がくっきりと刻まれていました。
「何をこんちくしょう、で今までやってきましたわ」
浪速のど根性、ここにあり。
カッコ良さに、感動しました。
寒空の下、46年の年月を経て磨き抜かれてきたラーメンの味は最高に美味しかった。
帰り際に屋台にいらっしゃった馴染みの女性のお客さんが、「兄さん、今日も寒いね」と言っていました。
自分の信念を貫く66歳は、いつまでも青年の輝きを放っているのですね。
「その道に入ったら、何が何でも続けることやね」
続ける信念が、周りの人に感動を呼び起こします。
by You