卒業文集で、過去の自分と再会しましょう。

親愛なるあなたへ

高校時代の卒業文集を見つけました。

今から11年前に編集されたものです。

お題は、「10年後の自分」でした。

ちょうど、今です。

高校生の自分は、今の自分をどんな風に思い描いていたのだろうと、ドキドキしながらページをめくりました。

高校生の頃に書いた文章を読み返すのは、恥ずかしい。

みんなに見られる作文だからと、背伸びして大人っぽく書こうとしているのがバレバレなのです。

高校生の僕の文章は、夢は語っているけれども、姿勢が逃げ腰だなと感じました。

いくつも言い訳を作っているのです。

文章が「言い切り型」ではありません。

自分から逃げながら、理想ばかりを書いている文章でした。

志を高く持って理想を語るのは、素晴らしいことです。

大切なのは、「言い切り型にする」ということです。

「〜けれども〜さんが言うから〜と思うがしかし〜」となるのは、「逃げ腰型」です。

僕もこの日記を書き始めてから、言い切り型にするよう、常に気をつけています。

僕の夢は、医者になることでした。

病気と闘う人を応援してあげたい、という気持ちからでした。

僕は小さい頃に大病を患ったので、入院生活や治療・検査の辛さは体に焼き付いています。

大学・大学院でサイエンスを学び、製薬会社に就職し、3年半で飲食業へ転職して、しかも将来は独立したいなんて、昔の僕が聞いたら何て言うでしょうね。

10年前の自分が思い描いていた夢とは全然違う自分がいますが、僕は、今の自分が大好きです。

思い描いていた自分も素敵だけれども、今の自分もとっても素敵です。

文集を読むと、過去の自分と対話することができます。

当時18歳の僕は、社会の風に当たらず、経験も浅い中で文章を書いてはいますが、その中でどんなことを感じていたのかを、今の僕に思い出させてくれるのです。

過去の自分の思い上がりを、恥じてはいけません。

他人の経験の浅さを、笑ってはいけません。

感性は、常に変化していきます。

元の形に完全に戻ることは、ありません。

そのとき、その場所でしか感じることができない、気持ちの巻き糸だからです。

感性は、地層のようにひたすら積み上がっていくものではありません。

感性は、新しい情報の毛糸を継ぎ足して、再び巻きなおすものです。

そのときの糸の長さ、巻き具合で、全く違うものなのです。

昔感じた感情や記憶を、大切にしましょう。

その感情や記憶と出会うと、今の自分と過去の自分の間に、もう一つ、巻き糸が作られます。

中間にシンクロした巻き糸が作られ始めると、反作用で、今昔両方の巻き糸が引っ張られてほどけ、再度巻きなおされます。

過去の自分と出会うことが、今の自分を創っていくのです。

と同時に、過去の自分も、創りなおされます。

それは、過去の自分への見方が変化してくる、ということです。

過去の自分と出会うことは、実は、自分にはいくつもの可能性が秘められていることを、知ることなのです。

by You